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山の記録 Activity Report

大台ヶ原 サマーコレクション

2022年01月09日(日)

2021年10月29日(金)〜30日(土)

サマーコレクションの全貌

サマーコレクションの全貌

 

 

大台ヶ原・千石嵓にある「サマーコレクション」(9ピッチ、5.10c/d)という、関西を代表するマルチピッチルートを登ってきました。千石嵓のある西大台ヶ原は、自然保護のための利用調整地区に指定されているため、事前の立入申請とレクチャー受講が必要になります。大台ヶ原ビジターセンターで、週末は朝7:30からレクチャーを実施していますが、我々は余裕を見て前日16:00からの最終レクチャーを受講しました。ビジターセンター駐車場での車中泊となり、夜は気温が5℃くらいまで下がって寒かったですが、満天の星には心を奪われるようでした。

翌朝6:00にビジターセンター駐車場を出発。千石尾根の廃道からガレ沢への下降点には黄色のテープが巻かれた木がありましたが、ガレ沢を下りてから千石嵓方向にトラバースする地点で少し迷いました。天井にリングボルトが打たれている岩屋を、岩に沿ってトラバースしてしまったのですが、岩屋からもう少し下ったところから千石嵓へ向かうのが正解でした。アプローチは評判どおりの悪さで、常に落石を起こさないよう注意する必要があります。

7:00にサマーコレクションの取り付きに到着。天候が心配でしたが、晴れ時々曇り、最高気温は10℃で、岩場は南向きで日当たりが良く、風さえ吹かなければ快適でした。7:30に登攀開始。ツルベ方式で、リードとフォローのそれぞれが自分の荷物を背負うことにしました(すぐにリードは空身にすれば良かったと後悔しましたが)。1ピッチ目(5.5)は、私(D.H.)はフリーで抜けましたが、終盤のチムニーの抜け口に木が挟まっていて少し厄介だったので、パートナーのMさんにはロープを出して確保しました。

2P目取り付きにある有名なプレート

2P目取り付きにある有名なプレート

 

2ピッチ目(5.10a)からが本番で、まず私がリードです。1ピン目のボルトがとれてしまっていて、グラウンドフォールのリスクがありましたが、最初の難所であるトラバースをなんとか突破。ただ、中盤のレイバックで消耗し(空身にすれば良かった・・・)、終盤にルートを見誤って右往左往している間に、足が滑って5mほどフォール。オンサイトが無くなって、吹っ切れました。このピッチは、体が温まっていないのもあって、5.10cくらいに感じました。

2P目を登攀中

2P目を登攀中

3ピッチ目(5.10c/d)は、Mさんがリード。核心部のホールドに手が届けば5.9くらいで、我々は難なく突破できたので、あまり印象に残っていません。後続パーティーの女性クライマーは、核心部が難しくて回避せざるを得なかったらしいので、リーチのない人には厳しいのかもしれません。

4ピッチ目(5.10c/d)は核心ピッチで、私がリード。序盤のスラブでは、ホールドを探しながらの慎重な登りを強いられ、体力を奪われたところでハングに突入し、あえなくテンション。ハング付近のホールドは顕著なので、いかに体力を温存しながら登るかが鍵でしょうか。我々は4ピッチ目と5ピッチ目(5.8)をつなげて、50mダブルロープでぎりぎり終了点まで届きました。日陰のテラスがあったので、ここで少し休憩。サマーコレクションは前半が厳しいので、「あとは楽しみましょう」とお互いの士気を高めます。

4P目核心ピッチ

4P目核心ピッチ

6ピッチ目(5.6)は、Mさんがリード。このピッチの内容はアルパインで、立木でプロテクションをとれるためボルトが少なく、ルート取りに迷いました。水平にトラバースしてから10mほど左上すれば終了点が見えました。我々は、アルパインヌンチャクを2本持っていきましたが、このピッチではもう1本あった方が安心でしょう。

7ピッチ目(5.9)は、私がリード。ハイライトとも言える15mほどのハンドトラバースは、手はガバですが足があまりなく、ヒールフックやハンドジャムを駆使してレストしながら突破しました。岩の弱点を突く好ルートで、登っていてとても気持ち良かったです。フォローのMさんは、体力温存のために回収したヌンチャクはロープにかけたまま、素早くハンドトラバースを超えてきました。良い判断です。

6P目から向かい側の岩壁を臨む

6P目から向かい側の岩壁を臨む

 

7P目ハンドトラバース

7P目ハンドトラバース

8ピッチ目(5.9)は、Mさんがリード。高度感のあるカンテルートです。終了点の手前にリーチがないと少し悪い箇所がありました。ここまでで結構消耗して、ロープアップに悲鳴を上げていましたが、あとは気合いです。

9ピッチ目(5.9)は、私がリード。出だしはカンテを直上すれば簡単なのに、敢えて右に回って、足下が切れ落ちている所にボルトが打ってあります。「なんでやねん」とぼやきつつ、最後のハングをボルダームーブで突破したら、サマーコレクションの登攀終了。Mさんは地面に倒れ込み、私は「もう2週間はクライミングはええわ」と口にするほど疲労していました。登攀時間は6時間45分だったので、ゆっくりのペースだったのでしょう。帰りは、登攀終了点から15分程登ったところで防鹿柵にぶつかるので、柵沿いにビジターセンターの方向へ歩いていけば、アプローチのガレ沢への下降点付近にたどり着きます。

コロナ禍で運動不足のなか、Mさんとの1ヶ月間の強化練習を経て、今の自分達の力を出し切っての完登だったので、感無量でした。私にとっては、3年前から登りたいと思っていたルートなので、一つの目標を達成できて嬉しかったです。沢登りが本業のMさんにとっても、「沢ヤでもサマコレ登れるんだぞ」と、今後の成長につながる経験になったようで、充実感に満たされる山行になりました。

 

参加者2名(D.H.、会員外1名)

 

コースタイム

(前夜泊)6:00 大台ヶ原ビジターセンター駐車場発→7:00 千石嵓サマーコレクション取り付き到着→7:30 登攀開始→14:15 登攀終了→15:10 大台ヶ原ビジターセンター駐車場着→16:20 同発→18:30 京都着

 

装備

ヌンチャク20本、アルパインヌンチャク2本、50mダブルロープ

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