甲斐駒ヶ岳赤石沢ダイヤモンドAフランケ赤蜘蛛ルート
2023年08月19日(土)
事前の天気予報では晴れ時々曇りから雨、ただ雨も短時間の予報で概ね晴れ。予定通り5時半にJR山科駅発中央道経由で、10時に尾白川渓谷駐車場に到着した。昨年敗退時のほろ苦い気持ちを思い出しながら、長い長い黒戸尾根の登山を開始した。連日の35度を越える下界の気温とは違い、夏季の黒戸尾根はしばらく登ると涼しい風が吹き抜け気持ちの良いものであった。ただ、ギアを含めた重量級のザックを背負っているため、動くと暑い。Tシャツと手ぬぐいを濡らしながら、適宜水分補給を交え、6時間かけて七丈小屋へ到着した。その頃までは背後に雲が迫りつつも何とか天気はもっており、明日の祝杯用ビールを購入し、急ぎ8合目岩小屋まで登った。17時頃、岩小屋に到着した頃ににわか雨が降り始め、後方を歩いていたM氏は途中からレインウェアに身を包んで岩小屋に到着した。幸い雨は短時間で止み、夜には星空も見えていた。明日までに岩が乾いてくれることを期待し就寝。
8月5日
8合目から見下ろす北杜市は雲海に包まれ、上空には雲ひとつない空が広がり、これから始まる厳しい登攀を予期することなどできなかった。6時に岩小屋を出発し、アプローチは前回同様テープに導かれるように降り、Aフランケ基部に辿り着いた。大きなカンテを回り込めばすぐそこが赤蜘蛛ルートの取り付きである。登攀準備を整え、7時半に登攀開始。今回は飛ぶ鳥を落とす勢いで成長するM氏からスタートする。
1P目:Mリード
フリーでは5.11bのグレード。1ピン目から2ピン目で大きなハングを越えるため、アブミでの立ち込みもままならない。今回の秘密兵器であるPetzl社の『コネクト アジャスト』を使用し、何とか2ピン目へヌンチャクを掛けた(前回はチョンボ棒を使用)。そこからも高負荷なムーブが要求され、人工で小テラスへ、20m。アップもなくこのグレードはなかなかに吸われる。
2P目:Kリード
小テラスから左に回り込み大ジェードル(5.8)をハンドサイズのカムを効かせながら快適に登る。長いピッチのため、時折アブミの助けを借りつつ大ジェードルの中間のビレー点できる、40m。その途中にもビレー点が存在し、一度きってからハング下のビレー点まで登ることもできると思われる。
3P目前半:Mリード
大ジェードルの途中から少し左のクラックに出てハング下のビレー点できる。ここも古い残置ハーケンやリングボルトを使ったアブミへの立ちこみを要求される、20m。
3P目後半:Kリード
ハング下のボルト伝いに左からハングを越える。フリーでは5.11aの記載であるが、もはやフリーのムーブが思いつかない。トポでは左に5.10bのルートの記載もあるが残置が全く見当たらない。ハングを越えたところで、右に薄くかぶったV字ハングのボルトラダーが続く。この辺りからヌンチャクの弾切れが著しくなり、一旦ピッチをきる、15m。
4P目:Mリード
V字ハングをボルトラダー伝いに越え、簡単なスラブから草つきを右上し大テラスへ、30m。13時頃だったか、上空にはガスが広がりつつありしばらくすると雨が降り出した。やや不安な気持ちもあったが、大テラスの壁沿いに休憩がてら30分ほど雨をやり過ごした。少し雨が収まった頃合いで、気持ちを入れ直し再度登攀を開始した。
5P目:Kリード
大テラスの凹角から登り左上する、さらに続く凹角を上がりビレー点へ、25m。グレードは5.7だが、雨上がりで岩が濡れており緊張させられた。岩壁に走る核心のクラックを目の前にして緊張感が高まる。
6P目(核心):Mリード
スーパークラックから続く一条の綺麗な切れ込みがビレー点まで続く。人工登攀では右のクロスラインは使わずクラックを直上する。クラックはフィンガーからシンハンドサイズで、カムがバチっと決まった。ただ、小雨の降る中のAA1、果てしなく長いクラックにお互いカム→アブミの作業となっていった、40m。
7P目:Kリード
核心に時間を要し、陽が沈み始めたためヘッドライトを装着。ビレー点から右上し恐竜カンテを越えた。さらにボルタラダーで高度を上げ、立ち木を越えた辺りからナイトクライミングへ。ボルトに導かれるまま直登し、最後は右に数手トラバースしたのち左上しビレー点へ、30m。
8P目:Mリード
階段を越えた後、ここにきてフリーでは5.10c/dのスラブ〜フェイスルート。やや傾斜は緩くなるも、最後のA1に気力を振り絞って登攀した。ブッシュ帯に入ったところの太い木でビレー、30m。
以降は、踏み跡を辿りながら岩と木を登った。暗闇の中ヘッドライトの灯りを頼りに、アプローチ道のテープを発見し、安心感と共にロープを解除した、2P。アプローチ道も慎重に登り返し、8合目岩小屋へ辿り着く頃には0時を越えたところであった。空腹と喉の渇きを満たし、直ぐに疲れた体を横たえた。祝杯のビールは生ぬるく、いつもよりほろ苦い感じがしたのは気のせいか。
8月6日
太陽が昇ると共に起き出し、疲れた体に鞭打って下山の準備に取り掛かった。7時に下山を開始し、後は長い長い黒戸尾根を無心で下った。2人して尾白川渓谷駐車場に着いたのは12時半、売店で各々かき氷とソフトクリームで今回の登攀を労った。技術的な未熟さをまだまだ痛感させられた山行であったが、大きな経験になったと思う。帰京の車内では次なる登攀への話が弾む。ありがとうございました。
追記.
今回の主なギア。
ヌンチャク:15本(人工であれば最低20本は必要であったと反省)
カム:#0.3/#0.4/#3 2セット、#0.5-#2 3セット
コネクト アジャスト@Petzl社(人工では強力なお助けとなる)
(A.K記)
参加者:T.M、L A.K
8月4日