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山の記録 Activity Report

北岳バットレス(第5尾根支稜〜第4尾根主稜)

2023年08月26日(土)

2023年7月30日(日)〜8月1日(火)

北岳バットレス(第5尾根支稜〜第4尾根主稜)を登ってきた。日本で2番目に高い北岳(3,193m)の山頂付近に突き上げる大岩壁での計15ピッチのクライミング。登攀時間は8時間強、アプローチと下山を含めると行動時間は13時間半。体力勝負だったが、オールフリーでオンサイトしてきた。
1日目、京都を1:30に出発し、7:00に芦安駐車場に到着。駐車場で準備していると、乗合タクシーの運転手さんに声をかけられる。バスと比べて料金はほとんど変わらないし、速くて便利なので、7:20に乗合タクシーで出発。8:00に広河原に到着し、登山開始。目的地である白根御池小屋までは樹林帯が続くので助かったが、クライミング装備とテントを担ぐと、第2ベンチ前後の急登がなかなかしんどかった。11:10に白根御池小屋に到着。
12:20に岩場の偵察に向かう。踏み跡は明瞭で、巨石が目印のバットレス沢、水量豊富なC沢、枯れたD沢の見極めを誤らなければ、迷うことはない。C沢とD沢の間にあるケルンから中間稜に入り(踏み跡あり)、お花畑のガレ場を詰めれば、岩場の基部に辿り着く。第5尾根支稜の1ピッチ目を試登したところでガスが濃くなってきたので、岩場を後にし、16:20に白根御池小屋に戻る。
2日目、晴れ後曇りとの天気予報を確認し、2時前にテン場を出発。暗闇でも迷うことはなく、3:30に岩場に到着。今回は計4人、2パーティー編成で、リードとフォローのそれぞれが荷物を担いで登る。第5尾根支稜から横断バンドとヒドンスラブを経由して第4尾根主稜に取り付くルート取りだが、第4尾根主稜までは易しく、歩きも多いので、アプローチシューズとダブルロープ1本で登ることにした。
4:00にヘッドライトを点けて、Hリードで1ピッチ目(III級)の登攀開始。薄暗く、朝露で岩が少し湿っていたので、念のためにロープで確保して登る。
2ピッチ目(III級)はパートナーのOリード。この辺りで朝日が昇り、大岩壁が姿を現す。ピッチ途中に捨て縄で作られた支点があって終了点かとも思ったが、その後も岩稜が続くので、我々は50mギリギリまで伸ばしたところの立ち木でピッチを切った。
3ピッチ目はDガリーをコンテで登攀。4ピッチ目の横断バンドは、ピラミッドフェース基部のハング下を通る、浮き石の多いトラバース。ちょうど真下のDガリー大滝を後続パーティーが登っているのが見えたので、落石を起こさないよう、こちらが冷や汗をかいた。先行パーティーがいる場合は、Dガリー大滝は避けた方が良い。
横断バンドを抜けた後、浮き石だらけのCガリーを少し登ったところで、5ピッチ目のヒドンスラブ(III〜IV級)が左手に見える。いくつかライン取りがありそうだが、Oリードで、岩の弱点を突いたIII級程度のラインで突破した。これを登ったところが第4尾根主稜の取り付きで、富士山が歓迎してくれた。この時点で7時、登攀開始から3時間が経っているが、これからが本番。クライミングシューズに履き替え、ダブルロープ2本を結ぶ。
6ピッチ目(IV+級)、第4尾根主稜は10m弱の緩傾斜クラックから始まる。Hリードで、フィストジャムを効かせながら登ったが、ジャミングが苦手だとリードは難しいだろう。クラックの後は易しい緩傾斜のフェースが続くが、途中に捨て縄で作られた支点があるのが紛らわしい。
7ピッチ目(II級)の階段状の岩場は、Oリード。残置がほとんどないが、ルート取りさえ間違えなければ、難しい箇所はない。
8ピッチ目(III級)は白い岩のクラックで、Hリード。ジャミングが必須となるようなクラックではなく、ホールドが豊富な易しいフェースクライミング。
9ピッチ目(III級)は、Oリード。トポには30mとあるが、実際には15m程度で、あまり印象に残っていない。
10ピッチ目(IV+級)は、三角形の垂壁と高度感抜群のリッジで、「マッチ箱」と呼ばれる箇所。Hリードで行くが、三角形の垂壁の真ん中にハーケンが連打されているラインが5級程度のボルダーで、標高3000m付近で荷物を背負って登ると、なかなかに痺れた。おそらくA0で登る人も結構いるのだろう。
11ピッチ目は、マッチ箱の頭から20mの懸垂下降。この辺りでガスってきたが、眺望が素晴らしい。
12ピッチ目(IV級)は、Oリードで30mの垂壁を登る。難しくはないが、疲れてきたのと空気が薄いのとで、息が上がる。
13ピッチ目(III+級)は、Hリード。右のカンテと左のルンゼのどちらでも登れるようだが、我々は右のカンテを選択。序盤でカンテに出るところの1ムーブが嫌らしかった。枯れ木テラスでピッチを切る。
14ピッチ目は、Oリードでナイフリッジを15m程トラバース。2010年崩壊箇所で、巨大な岩が剥離した跡が残っている。トポでは次のピッチと合わせてIV+級とあるが、ナイフリッジだけならIII級程度か。
最終ピッチである15ピッチ目(IV+級)は、Hリードで「城塞ハング」と呼ばれる15m程のチムニーを登る。荷物を背負おうとやや狭いが、立体的で面白いピッチ。途中でニーバーを効かせられたり、最後まで楽しませてくれた。12:15に登攀終了。お花畑を詰めて一般登山道に出て、北岳山頂を経由し、15:20に白根御池小屋に戻る。テン場で北岳バットレスを眺めながら飲むビールは最高だった。

参加者4名(D.H.記)

コースタイム
(前夜泊、岩場偵察)2:00白根御池小屋→3:00 C沢、ケルンから中間稜へ→3:30 第5尾根支稜取付→4:00登攀開始→7:00第4尾根主稜取付→12:15 登攀終了→12:45 北岳山頂→13:15 肩の小屋 13:55→15:20白根御池小屋(翌日下山)

装備
ヌンチャク12本、アルパインヌンチャク4本、カム#0.5〜#3×各1本、50mダブルロープ


01_登攀開始(1ピッチ目)


02_北岳バットレスの下部(2ピッチ目終了点から)


03_第1核心のクラック(6ピッチ目)


04_第2核心の三角形の垂壁(10ピッチ目)


05_マッチ箱の頭(10ピッチ目)


06_枯れ木テラスへ向かう(13ピッチ目)


07_白根御池小屋から眺める北岳バットレス

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